公益社団法人発明協会

現代まで

道の駅

イノベーションに至る経緯

(1)「道の駅」の提唱から制度化まで

 自動車の普及や高速道路の整備により日本でも長距離ドライブを楽しむ人々は増加してきた。しかし、90年代初頭までは高速道路にはサービスエリアやパーキングエリアが一定間隔で設置されてきていたが、一般道路沿いには、民間の駐車場はあっても24時間休憩が可能な無料の大きな駐車場などは存在しなかった。このため、一部の地方自治体などを中心に一般道にもドライバー用の無料休憩施設を設置する動きがみられるようになっていった。

 1990年1月に中国地域づくり交流会のシンポジウムのなかで「道路に駅があってもいいのではないか」との提案がなされ、これが契機となって、翌年10月から翌々年4月にかけて山口県、岐阜県、栃木県の3地域において仮設の休憩施設を利用した「道の駅」の実験が行われた。この成果は、1992年3月に開催された「美しく豊かな道づくり~「道の駅」からのアプローチ」と題したシンポジウムで報告され、地域のコミュニティーの活性化や特産物のPR等、多くの効果が期待されることが明らかとなった。

 建設省(現・国土交通省)では、「道の駅」を1993年度から始まる第11次道路整備5ヵ年計画の施策として位置づけ、それに必要な施設、サービス等について検討するため、1992年5月に1回目の「道の駅」懇談会(座長・越正毅東京大学教授)を開催し、その後、2回の懇談会における検討を経て、1993年1月に「道の駅」に関する提言が提出された。更に、同年2月には「道の駅」整備についての要綱(登録・案内制度)が策定され、現在まで改定が行われている。この登録にあたっては、「道の駅」は地域の創意工夫により道路利用者に快適な休憩と多様で質の高いサービスを提供する施設とされ、休憩目的の利用者が無料で利用できる十分な容量の駐車場と清潔な便所を備えるとともに、それらの施設及び施設間を結ぶ主要な歩行経路のバリアフリー化が図られていること、利用者に多様なサービスを提供する施設であって、道路及び地域に関する情報を提供する案内所又は案内コーナーがあるものとされた。一般道路を含む道路沿いに、休憩機能、情報発信機能そして地域連携機能を備えた施設がここに「道の駅」として推進されることとなった。

 1993年、建設省は、全国103ヵ所の施設に対して、第1回の登録証を交付し、最初の「道の駅」が発足した

(2)「道の駅」の発展

 「道の駅」は、当初は高速道路のサービスエリアと類似の施設であったが4、次第に地域の特性、事情に即した運営を行い、それぞれが独自の特色を発揮するようになっていった。「道の駅」に設置される施設としては、店舗、売店が一般的であるが、屋内無料休憩所やレストラン、観光案内所等が併設されているものも多い。

 この店舗、売店では、地元の特産物を生かした商品、サービスの販売が活発化し、また、そのスペースを利用した地域色豊かな施設(温泉、特産物生産工場併設等)の設置や郷土色の濃いイベントの開催などにより、それぞれの「道の駅」の独自性を追求する動きが強まっていった。地元の農家や漁業関係者、更には伝統料理や菓子の業者などが参加し提供される商品、サービスは、その新鮮さや特色とともに安全性への信頼をも高め、「道の駅」それ自体が通過点ではなく目的地となる顧客をも生むようになってきた。

 更に、地域住民活動に関しても先駆的な「道の駅」では、単なる販売の拠点としてだけでなく、地元の福祉、健康増進、防災、観光ゲートウェイそして伝統継承拠点など多面的な機能をも発揮するようになってきた。その優れた事例は、2015年、国土交通省によって全国モデル「道の駅」として選定され公表されている4

 こうして、「道の駅」は地域振興の一翼を担う存在へと発展し、発足から24年で、その数は2017年11月末時点で全ての都道府県に存在し、その数は1134駅にまで増加した。

表1 全国モデル「道の駅」の選定

表1 全国モデル「道の駅」の選定
(3)「道の駅」の国際的展開

 「道の駅」は、21世紀に入り「一村一品運動」(地域住民が自ら誇ることのできる特産品を見つけ出し、国内のみならず、世界の市場にも通用する競争力のある商品に仕上げる活動)とともに発展途上国でも地域経済振興の観点から注目されるようになった。

 タイでは、2001年から国際協力銀行(JBIC)によって「道の駅」が地域開発の手法として紹介された。

 ベトナムでは、日本における南房総の「道の駅」での地域住民参加の経験を踏まえて、国際協力事業団(JICA)による「草の根技術協力事業」が実施された。ベトナムでは、全国15ヵ所に「道の駅」が設置され、交通の安全、商品の品質向上、交流の促進、地域振興などに取り組んでいる。

 カンボジアでは、ポーサット州の国道五号線沿いに、カンボジアの「道の駅」第1号がある。レストラン、トイレ、情報発信施設、地場特産品販売ショップ、24時間利用が可能なトイレが設置されている。

 そのほかにもケニアや中国等でも「道の駅」パイロットプラントの導入が検討されるなど世界的な関心を集めており5、2004年、世界銀行は、国土交通省と協力し、「道の駅」を参考にした地域開発のための世銀の「Guidelines for Roadside Stations “Michinoeki”」を作成している。


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